コロナ対策で、いま優先すること。2021.4.14 税理士法人SHIP 鈴木 克欣

先日、ある経営者から言われた。
「1年前、銀行からSHIPさんを紹介されて資金繰りのための財務改善を始めててよかったです。もし、今のコロナの状況下であの時のままだったらと思うとゾッとします。この1年で財務体質は大きく変わりました。まだ余裕があるとまでは言いませんが、1年前とは全然違います。」…

私自身、今年の2月を振り返ると、“働き方”はたった2ヶ月で劇的に変わった。
東京の渋谷OFFICEで週の半分を過ごすため、東京と豊橋を新幹線で行ったり来たりしていた生活は、今は全然違う。

毎日、コロナ対策の相談があり、打合せのほとんどをZOOMで行い、愛知県豊橋市のデスクに座りっぱなしだ。
ちょっとした打合せも携帯ではなくZOOMを使うようにしている。
この不安な状況において、私の仕事は少しでも不安を取り除くことにある。
この場合、声だけではなく“顔”を見て話したほうが、たとえリモートであっても効果が全然違うとわかったからだ。

飲食店やイベント業からスタートした資金繰り相談は、もうほとんどの業種に転換した。

私の考えを伝えると、
現在、資金繰りに切迫しているのであれば、日本政策金融公庫、保証協会を合わせて申し込む。
どちらかと選んでる余裕はないし、今後のコロナ情勢を考えると、後からさらに良い条件の融資や給付金が出てくる可能性もあるが、
重要なのは、“今の資金”を確保すること。これが最優先だ。

返済据え置きも選択する。
返済、つまりキャッシュアウトを限りなく制限することで、資金ストックを確保する。
従業員を休ませた場合には、休業補償も活用する。

今後、休業補償への助成金も日に日に条件が変わる可能性もある。家賃保証も同様だ。
重要なのは、“今の資金”をこの1年間確保すること。せっかく調達した資金も出ていってしまっては意味がない。
売上として入ってくる資金が減少し、どこかのタイミングで激減することを想定した場合、“資金を外に出さない”ことを最優先に考える段階だと思う。

借りたお金は今後返す。200万円の給付金は返す必要はないが、1年間返済の据え置きをして、実際に返済が始まった場合、その返済期間は1年短くなる。
返済期間がスライドするわけではない。法人税・消費税・社会保険料も猶予できる。
この1年間は、調達した資金を確保するために、返済を据え置きし、給付金を受け取り、助成金を活用する。

使えるものは使う。そのための情報を常に仕入れる。
どの国も経験したことがない事象が起きている状況で、政府を非難するよりも自分の会社のこの1年を考えたほうが良い。

なぜ、資金をストックするか?
時間を確保するためだ。

自分の会社の固定費は?
もし、1カ月の固定費がまだ不明なのであれば、早急に計算をしなければならない。
1カ月にかかる固定費が資金ストックの保存期間に大きく影響するからだ。

仮に、月の売上が1,000万円。仕入れや外注費の変動費が30%。固定費が700万円。月の利益はゼロ。

もし、売上が半分になったら、売上500万円。
変動費は30%なので150万円。固定費は700万円のままだ。月の利益は?▲350万円。

売上が減少すれば、仕入れや外注費は変動して減少する。確保しなければならない資金ストックは固定費の1年分。
最低でも半年。固定費700万円であれば、1年分で8,400万円。半年分で4,200万円。
現在の手持ち資金と相談して、どこまで確保すればいいかを考え、実行する。

固定費の中に人件費が300万円含まれているのであれば、休業補償を検討する。
家賃が50万円含まれているのであれば、家賃交渉や新しい家賃保証助成金などが出てくるか情報をいち早くゲットする。
まずは、キャッシュアウトを抑え、1年間の資金ストックを作る。
そして、時間を確保する。

冒頭の経営者の言葉を自分に置き換えてほしい。
そう。これから1年間で、コロナの先を乗り切るために経営体質を強くしておかなければならない。
日本のすべての中小企業が、コロナの先にはじまる返済や猶予した納税を自力で行っていくための体質を作っておかなければならない。

なぜ、上記の企業の財務体質は変わったのか?
月次決算を行い、毎月の試算表を理解し、無駄な経費をカットし、資金繰り改善の努力をしたから。
管理会計を導入し、日々、自社の試算表をクラウド上でチェックし、見直しを行ってきた。

残念ながら日本の中小企業で、ここまでやっている企業は少ない。おそらく全体の2割ほどだと思う。
つまり、自分だけではなく、周りの中小企業のほとんどが月次決算などやっていなかったという事。
2~3か月後の試算表を手に取り、その内容の分析も改善もやってはこなかった…。

これまでは…

これからはそうはいかない。
コロナ融資などで資金を確保したならば、時間を確保できる。
確保した時間で、自社の経営管理体制を見直すことができる。
顧問税理士や金融機関担当者に相談して、ぜひ進めていただきたい。

今回のコロナの影響において、日本の多くの中小企業は
月次決算、管理会計を導入し、クラウドやZOOMなどのリモートで経営管理を行うようになる。
私の“思い”も含まれるが、これまでやってこなかったからこそ、
実施すれば必ずその結果はついてくる。
日本の中小企業は強くなれる。

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