コロナ後の日本は人件費の考え方が変わります2022.3.16 税理士法人SHIP 鈴木 克欣

皆さん、こんにちは。
税理士法人SHIP代表の鈴木です。

コロナ禍で業績が厳しい企業が多いと思います。
私は、業績不振や資金繰りなどで相談に来られた企業に対して、まずコスト削減を伝えます。
多くの企業は、長年にわたりコストの使い方を見直していないため、贅肉のついた試算表が多いのも事実です。
年間支出の大きいコストから順番に見直し、これから3年間の売上・粗利を創出するコストでなければ思い切ってバッサリと削減することをススメます。

今の時代に合ったコストの使い方を想像し、時代に沿った支出にすれば必ずコストは削減されます。
これまで年間数百万から数千万円のコストを削減した企業をたくさん見てきました。
コロナ禍でも利益を出し続けている企業は、皆さんが思っている以上にコスト管理を徹底しています。
企業も人間同様、贅肉がない方が良いということです。

ほぼ全ての企業は、この大きなコストの中に「人件費」が含まれます。
役員報酬・従業員給与・賞与・社保・採用費・教育費などが人件費に含まれます。

業績が悪いと、金融機関からは人件費の削減を要請されるケースがあります。
コストの中でも大きな支出を伴う人件費は、容易にコスト削減が可能となるため真っ先に標的にされます。

しかし、人件費を安易に削減したツケは後からきます。
まず、人件費は他のコストとは違います。

人を採用し、企業文化を伝え、経験を積むことで、「人件費」は会社に利益をもたらします。
単なるコストではなく、これから3年間の売上・粗利を創出する重要な”ファクター”となります。
ですから、金融機関が人件費削減を真っ先に伝えてきた場合、
私はその担当者に対して”企業の中身を見れていない”と判断します。

私がいつも伝えるのは、
①まず人件費以外のコストを徹底的に見直し、
②人件費を削減するのではなくコントロールしてくださいと伝えます。

世界的に見て、日本人の給与水準が低いと言われています。
言い換えれば、日本人1人あたりの”生産性”が世界的に見て低いということです。
私は、この部分について異論がありますが、話が逸れてしまうので別の機会で伝えたいと思います。

人件費をコントロールする。
この時、チェックするのは、人件費の金額ではなく「労働分配率」です。

労働分配率=人件費÷限界利益(粗利)

企業が限界利益や粗利を獲得するためにどれだけの人件費を使ったか?
・・・という指標です。
過去の決算書から、自分の会社の労働分配率の推移をチェックしてみてください。
労働分配率は低ければ低いほど、生産性は高く、利益が出やすい体質だとわかります。

過去30年に渡り日本全体の労働分配率は上がり続けています。
デフレにより、売上が伸びず、その売上を確保するための仕入れや材料費は上がり続けてきました。
その結果、限界利益率や粗利率は徐々に下がっているはずです。

では、人件費はどうですか?
最低賃金は上がり続け、採用費は高騰し、その上、社員はなかなか定着しない。
これが、日本の企業の現状です。
人件費を他のコストと同様に捉えるのではなく「労働分配率」を軸にコントロールしていく考え方が、
コロナ後の日本において重要となります。
日本人の給与水準がこれから上昇していくためには、社員1人1人が「儲ける」意識を持ち、
自分が儲けた中から自分の給与が分配されるという意識を持たなければなりません。
私は、幹部教育や社員教育のときには、「皆さんはどれだけ儲けていますか?」と質問します。

その結果、1人1人の企業への貢献が利益をもたらし、給与水準を引き上げていくことになります。
労働分配率も、適正な範囲内でコントロールされることになります。

多くの企業が、”人”の問題を抱えています。
コロナ禍の日本のほとんどの企業がそうでしょう。つまり、日本全体の課題だと言えます。
この課題解決の糸口は、日本人の「儲ける意識」にあります。

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