いま、中小企業が給与を上げるべき理由2023.2.1 税理士法人SHIP 鈴木 克欣
皆さん、こんにちは。
税理士法人SHIP代表の鈴木です。
ユニクロが年収最大40%アップすることを発表しました。
ユニクロ以外でも、HONDAや第一生命なども相次いで5%の賃上げを発表しました。
このようなニュースが飛んでくる中で、多くの日本人は実感が湧いていません。
それはなぜでしょうか?
日本では、70%ほどが大企業ではなく中小企業で働いています。
正社員ではなく、パートやアルバイトの方も多数います。
大企業のベースアップの話を聞いても、日本人の多くはその影響を受けないことになります。
「所詮、自分には関係のない話だ」と思っている人たちが多いのではないでしょうか?
でも、いつまでもそんなことを言ってられない現状があります。
マクドナルドがまた値上げをしました。昨年はすでに2回の値上げを実施しています。
このほかにも、生活のすぐ近くで多くの食料品や水道光熱費など、4月以後も値上げを発表しています。
「上場企業ばかり羨ましいな・・・」と考えるのも危険です。
アメリカのGAFAでは、1万人を超える大規模なリストラが実施されているのをご存知ですか?
GAFAとは、グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾンの4社のことです。
もともと社員への高待遇を実施し世界を牽引してきた企業が、
大規模なリストラを実施しなければならない状況になっているんです。
日本でも、ユニクロをはじめとする大企業が今年の秋頃には大規模なリストラを実施するかもしれない。
物価が上昇し続け、大幅な給料UPのニュースが続いた結果、リストラが相次ぎ失業率が上昇する。
ロシアの侵略も続き、十分な物資が日本に入ってこない状況が継続され、さらに物価は上がり続ける。
想像してみてください。
今年の日本の景気が最悪になったケースをどれだけ想像できるかです。
過去のブログでも、日本人が「平和ボケ」していると書いてきました。
世の中で起きていることは「他の誰か」ではなく、自分や家族に起きていることだということです。
2020年はじめに日本にコロナが上陸してから、僕自身もSHIPスタッフに言い続けてきました。
「生きていくためには、自分で考える」ことをしなければならない。
SHIPも中小企業です。中小企業の強みは、経営者と社員との”距離の近さ”にあります。
日本の未来やそれによって自分たちの生活がどうなっていくか?・・・を僕は社員に伝えてきました。
それを受け取ったSHIP社員は徐々に「自分事」の意識を持つように変化してきました。
・年間4,030時間あった事務所全体の残業時間が年間364時間まで減少
・確定申告時期の残業は夜7時まで
・朝5時から夜7時までのフレックス制度導入
・リモート業務を継続するためのコミュニケーション方法の試行錯誤
・採用から営業までスタッフ主導で実施
・bixidを中心とするITスキルの向上により1人当たりの時間単価上昇
などなど、この3年で社員が自分事として自ら実施してきたことは数え切れません。
SHIP社員が自ら考え、「こうすればもっとよくなる」を続けてきた結果です。
まず、経営者が裸の王様にならないためには、自ら「裸」になることです。
過去の大震災やリーマンショックを超える現在の状況を経営者ひとりで乗り切ることは不可能でしょう。
経営者が、毎日、会食という名目で飲み歩いてるとしたら、それこそ「平和ボケ」です。
経営者が楽しく飲んでる時間に、社員は育児をしながら明日の仕事のことを考えているかもしれない。
経営者が楽しく飲んでる時間に、社員は本を読んで勉強してるかもしれない。
経営者として「できること」と「できないこと」を明確に伝え、社員も責任を持つ時代です。
中小企業の組織の箱の中で、経営者だけが責任を負う時代ではありません。
その責任の色と重さは違いますが、そこにいる社員も給料をお客様から受け取っている以上、
「プロとしての責任」を持たなければならない。
経営者は「裸」になり社員と正面から向き合い、
社員は経営者が考えていることを聞き、自分ができることのために努力をする。
そういう経営者は社員とお酒を飲んだりランチをしたりする時間が自然と増えていくんです。
いま、中小企業はどのように動けばいいか?
まず、中小企業も給与を上げるべきだと思います。
業績が良くなってから・・・と言われる経営者が多いのも事実です。
では、上記のような背景の中で、いつになれば業績は良くなるのでしょうか?
着眼点を変えることで、別の選択肢が見えてきます。
中小企業も給与のベースアップを実施し、「社員の責任」を明確にするんです。
事業は経営者だけのものではなく、組織にいる全員が顧客のため、社会のため、
自分達のために事業を行っているという意識にマインドセットしなければならない。
自分たちの給与は組織から得るのではなく、顧客や社会から得ているという意識を持てるかどうかです。
この3年間の間でも、SHIPのクライアント企業の多くは業績を伸ばしてきました。
3年前に、経営者の意識が変わり、社員との会話を増やして
数字をディスクローズしてきた結果、業績が大幅に伸びた企業もあります。
これらの企業はユニクロより前に、給与を上げることを選択してきました。
様々な出来事を「自分事」として捉える社員が増えれば、組織は活性化します。
活性化した企業は、必ずひとり当たりの生産性が上昇します。
責任感を持ち、目がキラキラした社員が一生懸命に学び努力して経営者にぶつかってくるんです。
経営者はその想いを受け止める責任があります。大変な責任です。
だからこそ、はじめに「裸」になる。
「裸」の状態で、経営者も本気になって社員の生活や人生を考えていく。
これまで多くの中小企業を見てきました。
規模や業種は様々ですが、「大切なもの」のために頑張れる組織には、
まだまだポテンシャルがあるはずです。
そして、日本の大企業ではなく中小企業にこそ、「可能性」があると僕は思っています。