「企業価値担保権」という新しい融資制度がスタートします2025.11.5 税理士法人SHIP 鈴木 克欣

皆さん、こんにちは。
税理士法人SHIP代表の鈴木です。

2026年に新しい融資制度がスタートすることをご存知でしょうか?

2024年6月に「事業性融資の推進等に関する法律」が成立し、2026年5月25日施行予定で、従来の不動産担保や経営者保証に依存しない「新しい融資のカタチ」がスタートします。
約半年後です。

これまでの不動産担保や経営者の連帯保証などとは変わり、「企業価値担保権」が新たに創設されます。

企業価値担保権とは
企業価値担保権とは、企業の「事業価値」全体を担保とできるため、不動産などの有形資産に乏しいスタートアップ企業や、経営者保証に頼らず資金調達したいと考える企業にとっては非常にプラスになる融資制度です。

そもそも、不動産担保や経営者の連帯保証で融資を実施した場合、経営者は思い切った経営に挑戦することへの弊害が存在していました。
これまでにはなかった新しい選択肢が登場することで、企業にとっての金融機関との付き合い方、事業に対する向き合い方も変化していくことが予想されます。

経営者が未来を語る
企業価値担保権の担保財産は、企業の「総財産」になります。
この総財産には、将来取得財産も含み、のれん等の無形財産も担保価値として含められます。

つまり現在の決算書(過去の実績)だけではなく、事業計画書(未来の効果)も含めた財産が担保の対象となります。
経営者においては、実現可能性の高い未来に向けた「事業計画書」が求めらることになります。
過去のデータも含めた未来への挑戦を経営者自ら語り、その根拠を示すことができなければ「事業価値担保権」が登記されることはないでしょう。

これまで作成してきた”融資のための事業計画書”ではなく、売上を構築し利益を創造する、いわば「骨太の事業計画書」が求められるはずです。
しかし、経営者だけでなく事業価値担保権の運用には様々な課題が存在します。

・・・・・

金融機関に求められる「目利き」
事業性評価に基づく融資が推進され、有形資産担保に依存しない幅広い融資が実現したとしたらどうなるでしょうか?
現在は、「売上の3ヶ月分」という借入金対月商倍率という融資の枠が存在します。
つまり、まず売上を増やさなければ大きな融資を実行できなかったこれまでとは異なり、事業性融資による資金調達を行うことで、企業の成長や改善に向けたスピードを
上げていくことが可能となります。

同時に、金融機関は将来の事業計画、キャッシュフローなどについて、実現性があるかどうかの判断を求めらることになります。
その企業の「事業の力」を判断するための「目利き」が金融機関には必要となります。
正直なところ、日本全国の金融機関に目利きのスキルが十分あるとは言えないからこそ、企業価値担保権を定めるためのスキルを向上していくために、金融機関は今後変化をしていくと予想されます。

当たり前になる月次決算
金融機関がその企業の未来の価値を評価し、企業価値担保権を行使する。
これにより、企業は大きな融資を実現し、経営者はさらに事業に集中することができる。
上記の状況を想像したとき、金融機関と企業はこれまで以上に頻繁に会話を行うようになります。
それが「モニタリング」です。

もし、企業や会計事務所が作成する試算表が数ヶ月も前のものでは、金融機関は納得しないでしょう。
そこには、精度の高い「月次決算」が求められることを意味します。
今後、金融機関の興味は、企業の成長や経営改善へと変わっていきます。
その結果、金融機関との関係は深まっていき「伴走支援」が実現されます。
つまり、会計事務所の体制も今回の事業性融資のスタートとともに変わらなければならないということです。

本当の伴走支援が始まる
様々な難題を抱える企業が、その企業価値を高めていくために金融機関と会計事務所と伴にモニタリングを実施しながら、そのポテンシャルを最大限に結果につなげていく。
言ってみれば、企業の抱える課題をリアルタイムで共有していくことが、「伴走支援の本質」です。
これまでの延長では、企業も金融機関も会計事務所も本質を手に入れることは出来ないでしょう。

おそらくインフラがすぐに変わることはないと想います。
しかし、ゆっくりであっても確実にこれまでとは違う方向に向かっていくと予想はできます。
そして、僕自身はそんな未来をずっと想像してきました。
税制面においても助成金や補助金においても、「挑戦する企業」のためにあるべきです。
我々は、多くの企業と少し先の未来をこれからも共有していきたいと考えます。

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