戦略2026.3.11 株式会社クリエイティブアローズ 乳井 俊文

皆さん、こんにちは。
株式会社クリエイティブアローズ代表の乳井です。

3月に入り、春の気配を感じる日が少しずつ増えてきました。年度末ということもあり、多くの企業で「来期をどう戦うか」を考える時期ではないでしょうか。

私は仕事柄、全国のメーカー企業や流通企業と関わる機会が多いのですが、そのなかでいつも興味深く感じることがあります。それは、地方に拠点を置く食品メーカーのなかに、決して大企業ではないのに、しっかり利益を残し、独自の存在感を放っている企業があることです。

食品製造業は、原材料高・物流費・人件費の上昇にさらされやすく、一般に高収益化が簡単な業界ではありません。実際、食品製造業の売上高営業利益率は2023年度で3.1%とされており、薄利構造の業界であることが分かります。

だからこそ、地方食品メーカーで高い付加価値を実現している企業を見ると、そこには必ず「良い商品を作る」以上の工夫があります。

今回は、公開情報で確認できる実例を参考にしながら、地方食品メーカーが実践しているマーケティング戦略を、5つのケーススタディとして整理してみたいと思います。食品メーカーに限らず、中小企業全般の戦略立案にも通じる話だと思います。

 

1.「日常食品」をプレミアムに変える戦略

象徴的な事例のひとつが、茅乃舎です。
茅乃舎は、上質な素材を厳選した「茅乃舎だし」を中核に、全国の店舗展開、地域限定商品、オンラインでのギフト提案まで含めて、だしを“ただの調味料”ではなく、“暮らしを整える上質な贈り物”として見せています。公式サイトでも、商品だけでなく、店舗体験、限定品、贈答需要までが丁寧に設計されていることが分かります。

本来、だしは日常の基礎調味料です。価格勝負に陥りやすいカテゴリーのはずです。

しかし、素材、世界観、店舗、贈答、使い方提案を一体で磨くことで、「安い調味料」ではなく、「こだわりのある食生活を送りたい人が選ぶもの」へと意味を変えました。

ここで起きているのは、単なる高価格化ではありません。価値の再定義です。

商品そのものを大きく変えなくても、誰に、どんな文脈で、どんな体験として届けるかを変えることで、日常品は十分にプレミアムになり得る。これは地方メーカーにとって非常に重要な示唆です。

 

2.「目利き層」から信頼を積み上げる戦略

次に注目したいのは、島根・奥出雲の井上醤油店のような考え方です。
同社の「古式じょうゆ」は、天然醸造、国産原材料、蔵つき酵母といった製法価値を前面に出し、大量生産・低価格競争とは違う土俵で選ばれています。公式情報でも、効率優先の近代醸造ではなく、自然に委ねる思想を掲げていることが確認できます。

こうした商品は、最初からマス市場を取りにいくというより、料理好き、食にこだわる生活者、目利きの強い層に支持されることで、ブランドの信頼を積み上げていきます。実際、料理系メディアや生活情報メディアでも、井上古式じょうゆは「使い続けたい調味料」として取り上げられています。

ここで大切なのは、いきなり全員に売ろうとしないことです。まずは、分かる人に深く刺す。その支持が、あとから一般市場に広がっていく。

言い換えれば、認知の量より、信頼の質を先に取る戦略です。地方食品メーカーが全国で戦うとき、広告費で押し切るのは簡単ではありません。だったら、最初に狙うべきは“広さ”ではなく“深さ”です。これは非常に現実的で、強い勝ち筋だと思います。

 

3.観光導線を使って、価格競争の外で戦う戦略

地方企業にとって、極めて相性が良いのが観光です。

静岡では、お茶や抹茶を「飲料」だけで終わらせず、スイーツ、体験、土産、観光施設と結び付ける動きが進んでいます。

たとえば、ななやは“世界で一番濃い抹茶ジェラート”を打ち出し、抹茶そのものを観光価値のある体験商品へ転換しています。また、静岡県や静岡市の観光情報でも、抹茶ジェラートやお茶スイーツ、闘茶・ブレンド茶体験、茶を軸にした周遊提案などが確認でき、単品販売ではなく観光導線の中でお茶の価値を高めていることが読み取れます。

観光市場の良いところは、スーパーマーケットとは意思決定のルールが違うことです。旅先では、価格だけで商品は選ばれません。

「ここでしか買えない」
「体験した記憶と一緒に持ち帰れる」
「誰かに渡したくなる」

という要素が加わります。

つまり、地方メーカーは観光とつながることで、食品を“物”ではなく“記憶”として売れるようになるのです。これは、地方だから不利なのではなく、地方だからこそ持てる強みです。

 

4.ギフト市場を狙い、単価を引き上げる戦略

利益構造を変えるうえで、やはり外せないのがギフト市場です。

山本海苔店は、公式オンラインショップでも「ギフト・贈答用」を明確に打ち出し、店舗でもプチギフトから格式の高い進物まで幅広く展開しています。百貨店立地の店舗紹介を見ても、日常消費だけでなく、贈答文脈で商品を選ばせる設計が徹底されていることが分かります。同じ海苔でも、スーパーの棚に並べば価格比較の対象になります。
しかし、贈答の文脈に入った瞬間、求められるものは

「一番安いこと」ではなく、
「恥ずかしくないこと」
「相手に気持ちが伝わること」
「ちゃんとして見えること」

に変わります。この違いは大きいです。

市場が変われば、適正価格も変わる。言い換えれば、商品を変える前に、売る文脈を変えるだけで利益率は変えられるということです。地方食品メーカーが地域素材を持っているなら、なおさらです。特産品、季節性、限定感、手土産需要。ギフト市場は、地方性と非常に相性が良いのです。

 

5.「普通の商品」を嗜好品へ変える戦略

最後は、缶詰のような一見コモディティに見えるカテゴリーです。

たとえば、K&Kの「缶つま」は“お酒に合う肴を缶詰にした”という切り口で、缶詰を保存食や日常食ではなく、嗜好性の高いおつまみへと転換しています。さらに「缶つま極」のような上位シリーズも展開しています。
また、オーシャンプリンセスのホワイトツナは、びん長まぐろだけを使うなど素材と製法を前面に出し、“本格ツナ缶”“贅沢ツナ缶”として位置付けています。
木の屋石巻水産も、石巻港に水揚げされた金華さばを冷凍せず鮮魚のまま缶詰にし、原材料を「さば」と「食塩」のみに絞るなど、缶詰を高付加価値商品として成立させています。ここから学べるのは明快です。もともと安価なカテゴリーでも、

✓素材
✓製法
✓物語
✓用途
✓デザイン

を再編集すれば、日常品は嗜好品になります。そして嗜好品になると、比較される軸が「安さ」から「好きかどうか」に変わる。この変化は、価格以上に大きいです。なぜなら、好きで買う商品は、価格だけでは代替されにくいからです。

 

儲かる地方食品メーカーの共通点

ここまでの事例を俯瞰すると、共通点はかなりはっきりしています。

✓スーパーの価格競争を主戦場にしていない
✓ブランドの意味と物語がある
✓販売チャネルを戦略的に設計している
✓誰に向けた商品かを明確にしている

要するに、「良いものを作る」だけではなく、「どう勝つか」を設計しているのです。これは当たり前のようでいて、実は多くの中小企業が十分にできていないところでもあります。

✓良い商品を作れば売れる
✓営業を増やせば売れる

もちろん、それで伸びる局面もあります。けれど、人口減少、流通の寡占化、情報の飽和が進む今は、それだけではなかなか勝ち切れません。必要なのは、

✓どこで売るか
✓誰に意味がある商品にするか
✓どう記憶されるか

まで含めて設計することです。それが、マーケティング戦略です。

 

私たちの仕事

クリエイティブアローズは、商品ブランディング、地域ブランド構築、販売戦略設計、デザイン開発、プロモーションを通して、中小企業の「売れる仕組み」をつくる会社です。私たちはよく、「広告代理店ですか?」「デザイン制作会社ですか?」と聞かれます。

もちろん、広告もデザインもします。でも、本質はそこだけではありません。

私たちがおこなっているのは、戦略をつくり、その戦略が正しく伝わり、成果を生み出す形まで落とし込むことです。

✓何を売るか
✓誰に売るか
✓どこで売るか
✓どう見せるか
✓どう選ばれる理由をつくるか

その全体をつなぐことが、私たちの仕事だと思っています。

 

最後に

地方企業には、まだまだ大きな可能性があります。

むしろ今は、地域性が弱みではなく、価値になる時代です。食文化も、素材も、風土も、作り手の思想も、きちんと設計されれば、十分に競争力になります。大事なのは、その価値を“そこにあるべきもの”として眠らせるのではなく、“魅力的に伝わるもの”へ変えていくことです。

戦略があるから、価値は届く。クリエイティブがあるから、価値は記憶に残る。もしこの記事が、皆さまの会社の次の一手を考えるきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。

ご興味のある方は、是非SHIPの鈴木先生までご一報ください。

株式会社クリエイティブアローズ
代表取締役 乳井 俊文

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